1月26日(水)、ヨロン島砂美地来館で『夢七夜~ビーマとドラウパディの夢~』が上演されました。
公演は、小池博史ブリッジプロジェクトの一環で実施。空間演出家である小池博史さんが脚本演出を手掛け、力持ちの戦士ビーマ役をバリ舞踊家の小谷野哲郎さん、女神の化身ドラウパディ役を俳優の福島梓さんが演じました。プロの芸能に触れる機会の少ないヨロン島にとって、とても貴重な機会。当日は島民約70名が観劇しました。
小池さんは、ヨロン島で2015年9月に発足された、精神世界を舞台芸術として表現する劇団「野生の島人」の立ち上げ・指導にも携わっています。今回は、小池さんと野生の島人団長の沖隆寿さんに話を聞きました。
▲インタビューの様子(劇団「野生の島人」メンバーと小池さん)
かな: まずは年齢をお聞きして驚きました(笑) 現在、66歳なのですね!
小池さん: 気持ちは40代なんだけどね(笑)
かな: いつまでも若々しい小池さんに早速インタビューしていきますよー! ヨロン島に初めて来島されたのはいつですか?
小池さん: ヨロン島に来たのは2018年の7月。文化庁の5カ年事業に採択されたことがきっかけで、作品作りのワークショップを開くことになりました。
かな: 事業は他の地域でもおこなっているのですか?
小池さん: 事業自体は、本場の舞台芸能が身近に体験できない地域で、舞台公演を行ったり、劇団を育て自立させることが目標。場所は鹿児島県肝付町、徳之島、そしてヨロン島の3ヶ所で実施しています。
かな: なぜヨロン島だったのですか?
小池さん: 当時のマネージャーと僕が、沖くんが経営する東京都中野にあるお店「aman」の常連で。ちょうどこの事業を請け負った時に、ヨロン島に知り合いいるからいいんじゃない? という話になったわけ。
隆寿さん: お店で小池さんと話していて、いつかヨロン島で本場の演劇をして欲しいなって思っていたんです。これだけ凄い人の演出を、ヨロン島の人たちにも観てもらいたいなあって。まさか劇団作ることになるとは思わなかったけど(笑)
かな: ヨロン島の劇団「野生の島人」メンバーはどんな人たちですか?
隆寿さん: 劇団のメンバーは、これ面白い! と思ったものを共有したら、同じようにいいねと思ってくれるような、自分の感覚と近い人が集まってくれたかな。まずは自分で声掛けしたメンバーではじめて、これまで2作品を小池さんの指導のもと作りました。
小池さん: 面白い面子がそろっていると思いますよ。そうじゃなきゃ、素人で続かないし。ただ、続けることにはそれなりに財政面とかマネージメント力が必要になってきます。町などを今後は味方に付けていく必要があるでしょうね。
かな: 世界中さまざまな場所で公演を行っている小池さんですが、その中でもヨロン島ってどんな場所ですか?
小池さん: そりゃあ41か国くらい回っているので、それぞれ特徴もいろいろだし、魅力もそれぞれなんだけど…。一番好きな国がメキシコで。4mくらい大きなサボテンが立ってる道がずっと続いていて、その道の先に山と空があって。なんだかこのまま死んでしまうんじゃないかって思うような景色なんだよ。生と死が近い感覚、これがヨロン島にはあると思う。あとは、なんといっても海のキレイさは毎回来るたびにいいなと思いますよ。
かな: 1月26日にヨロン島で上演してくれた『夢七夜~ピーマとドラウパディの夢~』は、他の場所でも行ったのですか?
小池さん: 実は、今回が2回目。夏目漱石の「夢十夜」という物語があるのだけど、そこから発想を飛ばして作りました。インドの大叙事詩、世界三大叙事詩の一つ「マハーバーラタ」という作品を2021年8月に東京で上演したのだけど、その中の2人の登場人物、ビーマとドラウパディから妄想を膨らませて創作して。元の話を知らないで初めて観る人、ヨロンの人にも面白いと思ってもらえるんじゃないかな。
かな: ヨロン島の島民の反応は小池さんにとってどのように映っていますか?
小池さん: ヨロン島の人たちは新しいものに少し壁があるかもしれない。別の作品だけど、徳之島で上演した時は物販もたくさん売れるくらい、熱狂的? というか。ヨロン島で売れなかったことが悪いというわけではなくてね(笑)
かな: 確かに、新しい人や物には少し敏感かもしれませんね。その中で、「野生の島人」劇団がどのように島民に対して魅せていくかも大切になっていくのかも。
隆寿さん: 今は島の中だけでやっているけど、将来的には島外公演も出来たらいいな。まずは徳之島で、とか!
かな: 来年度には文化庁の事業は終わってしまいますが、ずばり、今後もヨロン島に来てくださいますか?
小池さん: 未定だけど、今後は子供の育成もやってみたいと思ってる。ヨロン島の子ども達と東京の子ども達が繋がれたら面白いかなあ、とか。いろいろ考えているんだよ~。
かな: さすが小池さんです! 今後もヨロン島の芸術発展には欠かせない存在ですね!
本格的な舞台設備も乏しいヨロン島ですが、プロによる舞台製作や演技力によって、ここまでの事が出来るのだ、と思うことが出来ました。来年度は文化庁5カ年事業の最終年度ということもあり、劇団「野生の島人」と共に作品を作り上げ、上演をするとのこと。今後のヨロン島での舞台芸術の発展にも注目です。