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ヨロンの種特集【特別企画】町制60周年記念 島の未来をむぬがったい
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【特別企画】町制60周年記念
島の未来をむぬがったい

Reporter ヨロンFun編集部

「ヨロンFun」×「与論町」コラボ企画!
与論町が年に4回発行している『広報よろん』の中から気になる記事をヨロンの種に掲載します。
観光とは一味違う視点で、与論町のことを深く知るきっかけになれば嬉しいです。

与論町は昭和38年(1963年)1月1日に町制を施行、「与論村」から「与論町」となり、令和5年(2023年)に町制施行60周年を迎えました。

今回は『広報よろんvol.325』(2023年3月発行)より、60周年を記念して企画された山元宗町長と、与論町在住の田畑香織さんの“これからの与論町についてむぬがったい(ヨロン島の方言でおしゃべりの意味)”の様子をお届けします。

◆山 元宗町長のプロフィールは→こちら
◆田畑 香織さん…昭和58年与論町生まれ。与論町内にて学習塾「まなび島」、つむぎ訪問看護ステーションを運営。地域課題の解決につながる人材を育成する「与論イノベーんちゅ創出事業」実行委員長など新しいことにもチャレンジしている。

 

朝から晩まで食べることのために。

▲町長室にて、左から田畑香織さんと山町長

子どもの頃の思い出を教えてください。

香織: 子どもの頃は自然の中で遊んでましたね。父が毎日海に連れて行ってくれたんだけど、すごいスパルタ教育で。ウドノス海岸でバタ足3往復とかさせられて。姉ちゃんは水泳上手で褒められるんだけど、私は怒られてばかりっていう記憶がほとんど(笑)

町長: 僕の子どもの頃は、遊ぶってことはなかったね。背中に子どもを括られて、芋ほりの手伝いに行ったり、海に行く時は釣りだったり、潜ってサザエを獲ったり、おかずにするためにね。
なんでもかんでも朝から晩まで食べることのためにやっていた気がする。結局、何もなかったわけだから、芋を掘ってきてタムヌを拾ってきて蒸して。水も汲んできて。

与論町で水道設備ができたのは昭和39年。町長の子どもの頃は水道設備もなかった?

町長: なんにもなかったね。子どもの頃からすると、こんなに拓けて良くなったなぁって思う。

香織: たしかに。

町長: 茶花の店に行ったことなんて滅多になかった。飴を一個買いに行くにも、家から(1時間近く)歩くしかない。それに、そんな小遣いもなかったしね。

田畑: 昔は道もガタガタでしたよね。この20年くらいで道路が舗装されて、非常に走りやすくなったなって、島に帰ってきて一番衝撃でした。

町長: 小学校の頃に初めて、トラックが1台入ってきてね。トラックの後ろをついて走ったのを覚えているよ(笑)

 

与論島は頑張ってるよ

▲車がまだ珍しかった時代の貴重な写真(与論町提供)

山町長は9月で任期満了となりますが、町長になられた当時のお気持ちを教えて頂けますか?

町長: あの頃、いわゆる増田レポートというのがあって与論町は鹿児島県で一番最初に消滅する可能性が高い自治体だと言うのを聞いて「それはいかん、何とかしないと」と思った。人口を維持するためには様々な分野での協力が必要で、一人で出来ることではない。だから『町民の英知を結集して』ということを掲げて、知恵を出し合って、みんなと一緒にやっていきたいなという気持ちがありました。

現在は、予想に反して人口の減少が少なかったことが良かったなと思っています。予想では4300人だったけれど、5000人をキープしているからね。それから香織さんのように若い人たちの活気が出てきている。群島会議で他の島に行くたびに、与論島が一番活気があるんじゃないかと感じるし、与論島は頑張ってるよという話をしてくるんだよ。

 

ここで自分が出来ることがある

▲昔の学校の様子(与論町提供)

香織さんは平成30年に与論町に戻られましたが、それまではどのようなお仕事を?

香織: 東京の会社で教育業界の営業職をしていました。具体的には高校生が大学や専門学校を選ぶときに必要な情報をプロデュースするようなことをしていました。

今、学習塾「まなび島」でもされていることですね。

香織: 令和2年に戦後最大の教育改革が行われると日本中の学校で躍起になっている時期に、機会を頂いて与論島で進路講演会をさせてもらったんですが、情報が届いてないなという感触があって。与論島はどうやって教育改革をやっていくんだろうって危機感を感じたんです。ここで自分が出来ることがある、自分にしかできないことがあるなって思って島に帰ってくることを決めました。

子どもの頃から教育の分野に進みたいという思いがあったのですか

香織: 子どもの頃はいろんな夢を持っていましたよ。みんなが思うようなことはひと通り夢見ました(笑)
そんな落ち着きのない子どもだったんですけど、大学でアメリカに留学をして、教育格差ってこういうことをいうんだなって、「教育が人を変える。人生を変える。社会を変える」これを体感してからは、教育に関わる仕事に就きたいなと強く思ってその仕事をしてきました。新しい時代に入ろうとしている中で、今までの役割を引き継ぎながら、それをどう移行させられるかが自分の役目だと思っています。

 

与論島にあるのは「誠の心」

これから与論町はどう変わっていくと思いますか?

町長: 「まちづくりは人づくり」と、どこの町でも言うんですよね。
一から人を作りあげていくという小・中学校の教育も大事なんだけれど、学んできたことを持ち帰って、香織さんみたいに広めてくれる人がいる。そうすると、それを見て「自分もやってみたい」という気持ちが出てくる。今、島にいる大人たちがそういう環境を作ってくれているというのは、とても嬉しいことだと思っています。

香織: 私はタイミングが来ているような気がするんです。それぞれの分野の若者世代が「僕たちがやらなきゃ」という課題感を持って、負をプラスにするために自分たちで考えて行動している。それぞれで動き出している、そんな風潮が出来ていると思います。

町長: 町制20周年の時に町民憲章ができたのだけど、私はあれほどいいものはないと思っています。
与論島は「誠の心」という大事な心があります。それは相手を立てて自分は後ろに引っ込んで、あまり出しゃばらないという側面もあって、そこは欠点なんだということで町民憲章の中では「積極性」と「創造性」をしっかりと謳ったわけです。だから与論町に足りないのは積極性だったんです。

香織: 「誠の心」も時代によって定義が少しずつ変わっていくとは思うんですけど、私が小学校の頃はずっと「誠の心、誠の心」と聞いて育ってきました。現教育長もお話の中で「誠の心」とよく言われていますよね。

それは何かといえば、アイデンティティなんです。与論の良さ、強みっていうのはアイデンティティがあることですよ。いろんな足りないスキルはあるけれど、人間の核となるアイデンティティは教育されているので、それを持ちつつ、論理的思考能力とかプレゼンテーション能力とか、今の10年で必要な力をつけていくことが大事。
今後、与論島の人材は世界で必要とされる存在になりえます。

それはすごく楽しみですね。

香織: 私は海洋教育などを通して、中・高校と関わっていますが、与論高校などは特に、日本最先端の教育をやっています。サイエンスキャンプといって東大とコラボして、科学的実験をやって社会にフィードバックする。これをやれている学校はそうそうない。
みなさんは気付いていないと思うけど、与論高校は日本最先端です。島の人たちも含め、日本各地から様々な人たちを巻き込んだ学びが進んでいるんです。「誠の心」を核にしつつ、フィールドが整ってきている。だからこそ、できる。

町長: もう一つ大事なのは「利他の心」と思っています。結局、仁に繋がっていくものだからね。この島には、そういうものがあって良かったなと思う。自分のことばかりではなくて、みんなのことを考えて、みんなが良くなるにはどうしたらいいかを考えられる。

それは今後、町づくりをしていくうえでも大切なことですね。

町長: 与論の人は自分が言ったことに対して、相手がどう思うかなって考える。なんでもかんでも自分が言いさえすればいいではなくてね。

香織: 子どもたちもそうなんです。ちゃんと意見を持っているんだけど、すっごく空気を読むので、あとは練習。練習の機会を作ってあげればいいと思っています。子どもたちは賢いので、大人が受け入れてくれるかをよく見てます。受け入れてくれそうな大人には言う。だから多様性を受けいれる器が町民一人ひとりに出来てくれば、みんな自分の意見を言えるようになってくると思うんです。そして、多様性を理解するためには、受け入れる側の知識も必要なんです。

 

与論の島は子や孫から預かっている

最後の質問です。次の世代へ、どんな未来を残したいと思いますか?

香織: とても難しいんですが、自分が望む未来を自分で切り拓く力をつけさせてあげたい。そのための環境づくりは私たち大人の役目と思っています。

町長: 僕はね、与論の島は子や孫から預かっていると思っている。祖先から受け継いだものであれば、どう使おうと勝手なんだけども、子や孫から預かっていると思うと、少しでも良くしたい。良くして次の世代にわたしたいという気持ちで、町政を進めている。少しでも暮らしやすくするために港も作りたいし、あれもしたい、これもしたい。その僕が一番好きなのは町民憲章。町民憲章に謳われているようなことをやっていけば、いいんじゃないかと思っています。

※島外の方にも読みやすいように、原文を一部アレンジしています。

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