Q: 「与論民俗村」とはどのような場所ですか?
菊さん:最初は私の母が各家庭から要らなくなった民具を集め始めたのがはじまりです。
高度経済成長期で、暮らしが急激に豊かになっていく一方で、親や祖先が紡いできた暮らしが少しずつ失われていくことに危機感を覚えて、それで、各家庭を一軒一軒回って頭を下げては民具や芭蕉布などを集めるという活動を始めました。
昭和59年からは「与論民俗村」として、当時からの暮らしがどのように移り変わってきたかを伝えるということをコンセプトに、伝統的な暮らしが体験できる、見ることができる、学べる施設として展開しています。
▲与論民俗村では民具を通して“暮らし”を知ることができる
Q: 今の与論島に何が必要だと思いますか?
菊さん:与論島にしかない静かな雰囲気、幸せな生活空間、歴史や文化、言葉や習俗、愛情などがたくさんある。それらがもっと観光の中に入っていって欲しいよね。
それは形式的なものではなく、なぜそういう慣習があるのか、なぜそういった考え方をしているのかというのをみんなが分かって伝えていく必要があるね。
与論島の人たちにはそれを誇りに思って都会の人に教えてあげるぐらいのプライドを持ってほしい。
リゾートを呼んで、レジャーをして、お金儲けをして、お客さんの方に合わせていく、都会の方に合わせていくというような発想だけでは与論島らしさは消えていってしまうと思うよ。
▲訪れた一人ひとりに与論民俗村の中を案内する菊さん
Q: 菊さんにとって与論島の魅力は何ですか?
菊さん:今、言ったことじゃないかな?
綺麗な海? 美味しい食べ物? それ以上に深くて素晴らしいものが与論島にはたくさんあると思う。
親や祖先の暮らし、苦労や工夫、繋がりや助け合い、その中には私たちに必要な知恵とか価値観がたくさん残されていると思うよ。それをみんなが知って、学ぶことでもっと魅力的な島になると思うね。
今はまだ他所の価値観に合わせてしまっている。遅れている進んでいるというものではないよ。
素晴らしいものがたくさんあるのに、それにまだ気付けていない気がするね。
Q: これから与論民俗村をどのような場所にしていきたいですか?
菊さん:安らげる場所と学びの場所、自分を見つめ直す場所だね。与論島に来て誰とも会わずにただ廻るだけではなくて、人と関わる体験をしてほしいね。
関心を持ってきてくれる一人ひとりを大切にして、本当の意味での「ヨロンファン」を一人でも増やしていきたいよね。
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菊さん、ありがとうございました。この記事を読んで、菊さんの話をもっと聞きたい! と思った方はぜひ与論民俗村を訪れてみてくださいね!
この記事は「ヨロンまちづくり共同組合」が発行した『SABITAN~最高の島LIFEをこの場所で~』に掲載されています
※1枚目の写真は秀史さん(左)と妻の友子さん