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ヨロンの種特集インタビュー『旅の島んちゅ×島の旅んちゅ』 吉田富和さん(空手家)
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インタビュー『旅の島んちゅ×島の旅んちゅ』
吉田富和さん(空手家)

Reporter ヨロンFun編集部

「ヨロン島で育った子どもはどんな大人になるんだろう?」 そんな疑問から始まったこの企画。島の外で暮らしている島んちゅにスポットを当てて話を聞いてみました。話を聞くのはヨロン島に移住した旅んちゅの池田かなです。

可能性は無限。

1人目: 吉田富和さん(空手家) 

【吉田富和さんのプロフィール】 Tomikazu Yoshida
ヤ-ナー(家名):トゥラ
1978年生まれ。5人兄弟の長男。与論高校卒業後、進学を期に島立ち。専門学校卒業後、緑健児師範(奄美大島出身)のもと、新極真会福岡支部緑道場に就職。第9回世界大会で日本代表選手に選ばれるなど、所属選手としても活躍する。2010年9月 新極真会沖縄吉田道場の道場長として沖縄県那覇市に赴任。
現在では4つの道場、約230名の道場生を持つ。
http://yoshidadojo.jp/

※以下、敬称略

 

空手やらせてくれなくて。

かな: さっそく、始めたいと思うんですけど。

富和: はい。

かな: ヨロン島に住んでいた時は、どんな少年でしたか?

富和: どんな少年・・・(考える)

かな: 小さい頃から空手を?

富和: いや、やってないんですよ。小学3年の時に「やりたい」って言ったんです。自分の叔父さんが指導者として教えていて、従兄弟とかも習ってたんで、「やりたーい」って言ったら、うちの母が大反対して。

かな: えー。

富和: やらせてくれなくて。

かな: なんでお母さんは反対したんですか?

富和: 人を叩いたり蹴ったりするのが好きじゃない。人の頭に足を上げるのが抵抗あるって言ってましたね。

かな: あぁ、なるほど。

富和: で、空手入れないんでサッカーに入りました。

 

かな: 海には遊びに行ってましたか?

富和: 海にはめっちゃ行きました。母方の実家が漁師で、父方の祖父が船持って大きい魚採ったりしてたんで。めちゃくちゃ行ってた記憶がありますね。

 

ただもう、好きで。


▲高校時代の練習風景

かな: では、空手はいつから?

富和: (叔父さんのやっていた)その空手とは別に、高校1年生の時に極真空手に入りました。
その時は親の反対もそんなになく。

かな: 沖縄に行きついた経緯は?

富和: 新極真会福岡支部緑道場から職員にならないかっていうので。内弟子制度っていうんですが、マンションの一室に住んで朝から晩まで事務仕事とか空手の指導とか。32歳になる年まで。

かな: それって…、お金は出るんですか?

富和: はい、給料は。事務仕事とかしながら選手としても結果を残すことを目的としたような生活です。

かな: その生活を10年間くらい。

富和: 僕は世界大会目指したいわけじゃないんです。ただもう空手が好きで、好きでやってて。
でも厳しい環境におかれてやらざるを得ない状況で、ちょっとずつ試合でも勝てるようになってきて。29歳の時に初めて本気で世界大会に出たいって思って、すっごい練習して世界大会に出たんです。

かな: すごい!

富和: 出たんですけど、1回戦で焦って蹴っちゃって、足の骨折れて救急車で運ばれて。

かな: うわぁー、痛そう。

富和: そこでもう挫折しちゃって。なんか、あーもう終わったーって。選手としても復帰できるかわかんない。自分の中で目標がなくなっちゃって。復帰までに1年半ぐらいかかったんです。

かな: あぁ…、つらいですね。

富和: そんなときに先生が「独立しないか」的なことを言ってくれて。先輩も「沖縄行けばいいじゃねぇか。おまえヨロン島で近いだろ」って。そういう問題じゃないだろって思ったんで、適当に返したんですよ。あーいいっすねぇって。

かな: (笑)

富和: そしたらその先輩が「富和が沖縄行きたいって言ってましたよ」って簡単に先生に言っちゃって。なんかトントン拍子に沖縄行きが決まってました(笑)

 

かな: 沖縄で大変だったことはありますか?

富和: やっぱ立ち上げですね。道場生増えないからめちゃくちゃ困りました。最初の何年間かはお金の事しか考えてなかったです。

かな: 私も住んでいましたけど、家賃高いですもんね沖縄。

富和: 1年間来るなって言ってたんですけど、半年で妻が北九州から移住してきたんです。妻も空手やってて。

かな: 空手繋がり!

富和: 情けない話ですけど、道場の家賃とか払えなくて奥さんの貯金使いこんでました。

かな: あぁ…仕方ないだろうけど(笑)。

富和: 申し訳なさすぎて。だから今は欲しいって言われたものはなるべく買うようにしてます(笑)
その数年間がほんとに一番きつかったな。

 

ニーズに応えてあげたい。

▲道場は3歳から入会でき、小学生までが大半を占める。

かな: これからの夢を聞かせてもらえますか。

富和: まだまだ小さくて恥ずかしい目標ではあるんですけど道場生1000人。

かな: おぉ!

富和: 1000人いれば、この地域になにか影響力があると思うんですよ。
道場生もそこに絡んでくる父兄さんにも。その意味でも1000人。

かな: 道場生は子どもがほとんど?

富和: 7~8割が子どもですね。そのうち小学生までが特に多くて6割くらい。

かな: 道場の方針も子どもメインで?

富和: そうですね。昔は空手をやらせるって言ったらケンカのイメージだったけど、今は違う。
まずいじめられない。それと、自信を持ってない子どもが多いですよね。

かな: 自信を持ってない子ども?

富和: 「この子自信がないから精神的に強くしたい」っていう親からのニーズが多い。

かな: なるほど。ケンカで強くなりたいという昔とは違って。

富和: 今のニーズに応えて、育ててあげたい。やんちゃな子ほど入ってこないですよ、今の時代。もしそういう子が来たら特別に選手として育てるクラスをすすめています。

 

一生懸命、好きなものを。

かな: ヨロンファンはもちろん、島の子どもにもこのインタビュー記事を読んで欲しいと思うんですけど、子どもたちになにかメッセージを頂けますか。

富和: 自分もヨロン島が特別な環境っていうのは島を出て感じたんですよ。
自分の出身言って「おぉ!」って言われるって、あんまりないし。きれいな島で海に囲まれてて。簡単に外に出られるわけじゃないけどやっぱりいいところで。
都会の人でも体験できない場所に生まれたってことは大切にしてほしいと思います。

かな: うん、私もそう思います。

富和: その中でも今はネット社会じゃないですか。何でも情報を取り入れられる。
可能性は、無限だと思うんですよ。

かな: 可能性は無限!

富和: 一生懸命好きなものを勉強して欲しいと思います。やらなきゃいけないことじゃなくて、本当に自分が好きなことを。
途中で道が変わったとしても、それが島のためになる。頑張っていけば島の名前も出てくるし。
なんでもいいから、好きなことを追求して欲しいなと思います。

 

* * * * * * * * * *

かな: ありがとうございました。ぜひ道場生を連れてヨロンに遊びに来てくださいね。

富和: 沖縄って意外に海が身近にないんですよね。子どもたち連れて行きたいですよ。

かな: ぜひ! ところで、このインタビューは某番組のテレフォンショッ〇ング形式で誰かを紹介してもらうのですが、誰かいませんか?

富和: えっ?

かな: 紹介→紹介で繋いでいこうと思って。

富和: ……おもしろいね。いい企画ですね。

かな: 誰か思いついたら教えてください。今日はありがとうございました!

(おわり)

※このインタビューは2021年8月に行ったものです。
※写真はすべて吉田富和さんよりご提供頂きました。

 

 

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