2024年夏、30kmの海峡を渡るSUP(スタンドアップパドルボード)レースが開催されました。
外洋でのSUPレースとしては、ハワイでの「M2O」とこの「O2Y」、世界で2例しかない海峡縦断。今回はその選手として参加した私がレースの概要をレポートします。
大会を主催したのは「KANAKA OKINAWA O2Y実行委員会」を運営する沖縄県名護市の荒木ファミリー。
1月に沖縄で行われた実力審査会を通過した選手やこれまで充分なレース成績をおさめた選手など計19名がレースに挑みました。
スタート地点は沖縄北部にある安田漁港から船で移動した東の海域。
「O2Y」は梅雨明けのカーチバイと呼ばれる南風に合わせて開催されるのですが、東へ移動する船にとっては、南=真横からの波風で大きく揺れながら向かうことになります。
到着したのは出港から1時間弱、この時点で嘔吐した選手もおり、スタート前からこのレースの過酷さを実感しました。
当日、海上での風速は15m、波高は約2mという海峡縦断と呼ぶにふさわしい荒れた海となりました。
そんな荒波の中、安全管理の船団を務めたのは沖縄の漁師さんたち。
生粋の「うみんちゅ(海人)」たちのサポートの中、朝9時にレースが開始されました。
今回のレースには、海外選手が5名参加。
国際的なSUPのサイトにも「ウルトラロングディスタンス」と紹介され、正に世界が注目するレースとなりました。
私自身は初挑戦となる海峡縦断。
波の力をいなし切れず、中盤から太ももが張り始め、指の付け根や足の指、腹筋がつり…、海の向こうあるヨロン島に近づく感覚がほとんどなく、「自分は本当に辿り着ける…?」と何度も思いました。
そんな海域を最も速く渡ってきたのは、現在世界チャンピオンに君臨する荒木珠里選手。
19名の中で唯一人3時間を切り、2時間51分でゴール。大会主催者でもある父親の荒木汰久治選手と共にワンツーフィニッシュを飾りました。
※荒木親子については2021年の特集記事もありますのでこちらもご参照ください。
日本のSUP界で活躍する荒木親子へインタビュー
レース全体としては、1名がリタイア、18名が30kmの荒波を完漕しました。
ちなみに私はゴールまでに4度落水(選手によっては10回以上落水した人もいたそうです)、それでも4時間14分漕ぎ続け、ようやく海峡縦断を実現。海を渡り切り、大切な家族の元に戻ってこれた時、心からの喜びと安堵に涙を抑えることができませんでした。
「海を渡る、そこに挑んだ人間にしか分からない」
その言葉の意味を全身で、五感と精神全てで感じた30km。
ゴールから目を逸らさずに漕ぎ続ける=前に進み続けること、本番以上にそこに向けた準備を続けること。
自然に立ち向かうのではなく、往なし、活かし、そして感謝すること。
SUP、そして海だけに留まらない大切なことが凝縮された一日、その舞台がこのヨロン島にあることを島民として心から嬉しく感じます。
今年もまた、夏に向けた動きを検討中とのこと。
沖縄とヨロン島、この豊かな自然の中で繰り広げられる大舞台。みなさんもぜひ会場(できれば海上)でお会いしましょう。
O2Y URL:https://www.kanakaokinawa.org/
↑詳細については公式HPをご参照ください。
写真提供:KANAKA OKINAWA O2Y様