りえこ: それでは、さっそくお話を聞いていきたいんですが。
さとし: はい。
りえこ: 今回は誰に話を聞こうか、本当にとっても迷ったんですよ。
さとし: 俺じゃない方がいいと思いますが…。
りえこ: そうなんですよね。でも、クラウドファンディングの動画を見てもらうと分かるように、まずはさとしさんなのかな、と。
さとし: …。
りえこ: 記事にするのを止めようかとも悩んだんですが、島ぐるみの取り組みで、海の環境保全にも繋がる、何より「牛肉」のインパクトは強くて。
さとし: …。
りえこ: というわけで、すみません。原田家の夫婦対談となっちゃいますが強行します!
よろしくお願いします。
▲原田畜産、親子でえさやり。
りえこ: まずご紹介なのですが、ヨロンFun編集部 原田りえこのダンナさんでもある原田諭さん。Uターンで島に帰ってきて、家業の畜産農家をされています。親牛を約40頭、仔牛を20頭くらい育てていて、島の中ではまぁまぁ頭数も多い方ですよね?
さとし: そうだね、島の平均は1件の農家につき親牛15頭前後だから。もちろん、もっと多い人もいるけど。
りえこ: ヨロン島は温暖なので牛の牧草を年に何回も刈り取ることができます。えさを自給できるので牛の飼育に適しています。沖縄の黒島や波照間島でも牛をよく見たけど、同じような環境ってことかなと思います。
さとし: 石垣島とかもね。同じ黒毛和牛です。
りえこ: 離島では母牛に子を産ませ、その子牛を育てて島外に出荷しています。ヨロンの子牛も出荷された先で肥育され、鹿児島黒牛とか松阪牛とかのブランド牛になります。
さとし: はい。
りえこ: ブランド牛は800キロくらいまで太らせます。それに比べてヨロンの母牛は500キロ、子牛は250~300キロくらい。子牛かわいいです。
さとし: 生まれたての子牛は特にかわいいよ。
りえこ: ヨロン島で肥育農家をするのは難しいと言われているけど、子牛に比べて船での輸送にリスクがある。と畜場がない。食事量も違うし経費がかかりすぎるというのが主な理由。でもヨロンの名前がついた牛肉があったらいいなぁと、みんなが何となく思ってた。
さとし: みんなかどうかは分かんないけど。
りえこ: そこで、どっぷり肥えた牛を育てるんじゃなくて、もともとヨロンにいる母牛に注目。
さとし: はい。
りえこ: 牛の出産は人間とかなり似てます。私は自分の時に牛の出産を見て予習しました(笑) すごいのは牛は一生で10~15頭くらい頑張って産んでくれるんです。そして頑張ってくれたあとは安く売られていくのがこれまでの当たり前でした。ひどい。
さとし: そうですね。
りえこ: 母さん牛はもっと価値が高いのではないか、母さんを引退した牛を再肥育して市場に出そうというのがこの「ヨロンアイランドビーフ」。全国的にもまだ珍しい取り組みです。
長くなりましたが、この説明で大丈夫?
さとし: うん、まぁ…だいたい大丈夫かな。
りえこ: よかった。移住した頃は乳牛と肉用牛の違いも分からなかった私もだいぶ成長しました。
さとし: え、分からなかったの?
りえこ: さて、やっと本題に入れますが、クラウドファンディングの反響にびっくりしています。1週間で目標の100万円を達成!
さとし: みんなから支援いただいて、自分の知り合いもだけど、たくさんの方に応援してもらって嬉しいです。
りえこ: すごいですよね。ヨロン島のことが好きだから応援します、という方もいて本当に感動しちゃいます。でも、ご支援の分だけプレッシャーは大きいです。正直なところ…。
さとし: はい。
りえこ: 楽しいですか?
さとし: やっぱり自分が育てた牛を食べたときはおいしかったから、すごいうれしい。おいしくて、びっくりした。周りの人も喜んでて嬉しかった。
りえこ: お、おぉ。こんな食い気味に答えが返ってくるとは思いませんでした。
初めて食べたのはいつですか?
さとし: 最初は6年前かな。
りえこ: その頃はヨロンアイランドビーフの話なんて全くなかったですよね。
さとし: うん。通常、牛は農協の主催するセリに出して出荷する流れなんだけど、成牛はセリに出しても本当に安かったりとかいろいろあって…。セリを通さずに出荷してみようと思ったのが最初。自分の育てた牛を食べてみたいって。
りえこ: それが6年前?
さとし: ううん。最初は話の行き違いがあって、出荷したけど買い取りできなくて。
りえこ: あぁ…。うまくいかなかったのね。
さとし: 2回目でAコープ(スーパー)に卸してもらって、それを買うことができて。系列の焼肉店を貸し切って家族や甥っ子とかも来てみんなで食べたんだけど、おいしかった。ちゃんと、おいしかった。
りえこ: ブランド牛は通常2~3歳でお肉になるんだけど、引退した母牛がお肉になるのは15歳くらい。これが生きながらに熟成されていくのか赤身がすごく甘くてうまみが深い。
さとし: うん。
りえこ: って、もう1人の発起人の隆寿さんがネットラジオの中で言ってました。
さとし: あぁ、ラジオ聞いたんだ(笑)
りえこ: 隆寿さんは畜産農家じゃなくて「カスタネット商店」のカレー職人。私たちはそんなに味の違いとか分かんないから「うちのお肉おいしいねー」「普通においしいねー。すごいねー」って言って食べるだけなんだけど(笑)
さとし: うん。
りえこ: 霜降りとかじゃなくて赤身がおいしいのがヨロンアイランドビーフの特徴。目指すのは高級層じゃなくて、『あなたの身近なヨロン島ビーフ』。家族や友達と大勢でわぁっーとバーベキューとかで楽しくおいしく食べてくれたらいいな! と思います。
さとし: はい。たくさんの人に食べてもらいたいです。
▲話合いを重ねるメンバー(左から太輔、諭、徹也、隆寿)
さとし: 今度、学校の給食にヨロンアイランドビーフを使ったメニューが出ます。
りえこ: おぉ!
さとし: 太輔(メンバーの1人)が話を進めてくれて、3月11日の給食でってことになりました。
りえこ: 小学校の給食?
さとし: 小学校と中学校も。11日は休まずに学校に行ってください(笑)
りえこ: なんていうか…「ヨロンアイランドビーフ」を通して、いろいろな可能性が広がっているのを感じます。島の子どもたちに食べてもらえるの嬉しいね。
さとし: うん。
りえこ: あと、今はメンバーの8人中6人が畜産農家なんだけど、農家じゃない隆寿さんがけっこう引っ張ってくれているでしょ。そこが面白いと思う。
さとし: 自分たちがわからない販売価格の設定とか、販路の交渉とかもしてくれてて、本当にありがたい。農家のうちらだけじゃ絶対しないよ。
りえこ: 隆寿さんはヨロンの特産品を使ったお土産を作りたいって、モーミャーカレーを作ってくれました。それがヨロンアイランドビーフの始まりだと私は思っているんだけど、さとしと隆寿さんの間で完結するかと思ったら他の農家さんや観光協会とかも巻き込んで島ぐるみで事業化とか大きな話になっていって。
さとし: はい。
りえこ: 大丈夫かなと見守る気持ちと、わくわく感というか面白いことをしているなぁというジェラシーというか羨ましい気持ちが混在しています。ヨロンFunでも、ヨロンアイランドビーフがどこまで島の中で大きな存在になっていくか取材していきたいと思っています。
さとし: あ…はい。よろしくお願いします。
▲さとしさんの育てた牛肉(事業化が本格始動する前@サム)
りえこ: 最後に環境や観光への試みについても少し触れたいんですが。
さとし: はい。
りえこ: 海を守ろうという話が出ると、セットのように牛の糞尿が海を汚す原因…と言われるのが実はけっこう切なかったんです。そういった環境問題にも取り組もうとしてくれていて嬉しいです。そういう声が当事者である農家の方から出るのが嬉しい。
さとし: うん。収益の一部を堆肥センターに寄付したり、ヨロン島独自の堆肥を作ろうという計画があります。
りえこ: 観光の面でも、ゆくゆくは島内の飲食店で食べられるようになったり、観光協会のネットショップでも購入できるようになるんですよね。
さとし: パスタソースやレトルトカレーを作ってお土産品にって話もあります。
りえこ: パスタソース…。クラウドファンディングを始める前に、大阪の堺筋本町にあるイタリアレストラン「ジョヴァノット」のシェフがヨロン島に来てかよい舟の厨房を借りて試食会をされた時の話ですね。
さとし: うん、パスタや牛カツを作ってくれました。
りえこ: 私は行けなかったのですが、写真見たらめちゃくちゃおいしそうで、悔しさしかありませんでした。
さとし: シェフの上村さんが言ってたけど、ヨロンアイランドビーフはパスタソースとかに加工するのも向いてるそうです。
りえこ: 商品化したら買います。今度こそ食べたいです…。
さとし: あ、はい。俺ばっかり食べてすみませんでした。
りえこ: それでは、そろそろこのへんで終わろうと思います。
さとし: はい。
りえこ: 「ヨロン島で何がおいしいですか?」って聞かれたら「ヨロンアイランドビーフ!」って言える日が来ますよね、いつかきっと。
さとし: はい、頑張ります。
りえこ: ヨロンファンの皆さんも、その日を楽しみにしていてください!
ヨロンアイランドビーフ事業所 住所:鹿児島県大島郡与論町茶花210-1 問い合わせ先:070-8533-3197 E-mail:mail@yoronislandbeef.com
SNS: facebook.com/groups/643395920199176
www.instagram.com/yoron_island_beef
写真提供(1枚目と3枚目):ヨロンアイランドビーフ事業所